日本の山 《 Vol.5 》

【 仙塩尾根縦走 】
 
2015年7月26日(日)〜31日(金)(前泊・後泊含む)
所在地:長野県〜山梨県〜静岡県
走行距離:493km(自宅 → 仙流荘駐車場)

【 仙流荘(標高約865m):長野県伊那市長谷黒河内 】 

(総文字数 約14,500文字)
実施行程表(※明記の標高は誤差があります)


第1日(27日/月曜日/天候:晴)

▼こもれび山荘(4:30) …登山口は林道を挟んで山荘のななめ前(標高約2,030m).

 <こもれび山荘(前日に撮影)> 
   ↓1時間
▼三合目(5:30) …すっかり明るくなった(標高約2,340m).
   ↓40分
▼五合目・大滝ノ頭(6:10) …小仙丈ヶ岳と馬ノ背への分岐点(標高約2,400m).

 <大滝ノ頭> 
   ↓25分
▼六合目(6:35〜6:40) …見晴らしの良い開けた場所(標高約2,650m).

 <六合目,後方左:甲斐駒ヶ岳> 
   ↓45分
▼小仙丈ヶ岳(7:25〜7:35)…標高2,864m.北岳(標高3,192m)と富士山が望める.

 <小仙丈ヶ岳,後方右:甲斐駒ヶ岳> 
   ↓1時間25分
▼仙丈ヶ岳(9:00〜9:25)…日本百名山(標高3,033m).

 <仙丈ヶ岳> 
   ↓35分
▼大仙丈ヶ岳(10:00〜10:20) …山頂で弁当タイム(標高2,975m).

 <大仙丈ヶ岳> 
   ↓1時間55分
▼休憩(12:15〜12:20) …樹林帯で見晴らしは無い(標高約2,600m).
   ↓35分
▼伊那荒倉岳(12:55〜13:00) …登山道脇が山頂.三角点がある(標高2,519m).

 <伊那荒倉岳> 
   ↓50分
▼独標(13:50) …開けた岩山.展望有り(標高2,499m).

 <独標> 
   ↓45分
▼横川岳(14:35〜14:45) …山頂で登山道は90度曲がる(標高2,478m).

 <横川岳> 
   ↓25分
▼野呂川越(15:10) …ここから小屋まで一気に下る(標高2,315m).

 <野呂川越> 
   ↓1時間
▼両俣小屋(16:10) …小屋前のベンチに座ってしばらく休憩(標高2,000m).

 <両俣小屋> 
 

 

 
歩行 10時間20分(起点:北沢峠)
休憩  1時間20分(昼食含む)          計 11時間40分
 


第2日(28日/火曜日/天候:雨 後 曇り 後 晴)

▼両俣小屋(5:20) …4時30分朝食.雨降る中,出発.
   ↓1時間15分
▼野呂川越(6:35〜6:45) …標高差約300mの登り返しはきつい.

 <再び野呂川越> 
   ↓1時間15分
▼休憩(8:00〜8:10) …1回目(標高約2,450m).
   ↓50分
▼休憩(9:00〜9:10) …2回目(標高約2,600m).
   ↓1時間10分
▼休憩(10:20〜10:25) …3回目(標高約2,800m).
   ↓50分
▼三峰岳(11:15〜11:50) …見晴らし抜群の山頂(標高2,999m).

 <三峰岳山頂> 
   ↓1時間
▼三国平(12:50〜13:05) …農鳥小屋からの道と合流(標高約2,700m).

 <三国平> 
   ↓55分
▼熊ノ平小屋(14:00) …小屋前のテラスで先客4人が雑談している(標高2,575m).

 <熊ノ平小屋> 
 

 

 
歩行 7時間15分
休憩 1時間25分                 計 8時間40分
 


第3日(29日/水曜日/天候:曇り後晴)

▼熊ノ平小屋(3:20) …ヘッドランプを点けて出発.
   ↓1時間35分
▼休憩(4:55〜5:00) …少し開けた場所で休憩.やや明るくなってきた(標高約2,610m).

 <休憩した場所> 
   ↓20分
▼竜尾見晴(5:20) …小岩峰の尾根が点在(標高約2,620m).

 <竜尾見晴> 
   ↓1時間15分
▼雲上の"庭園"(6:35) …庭園のような平地.通過するのに5分以上掛かる(標高約2,560m付近).

 <まさに“庭園”> 
   ↓35分
▼北荒川岳(7:10〜7:25) …山頂で弁当.霧が立ち込め肌寒い風が吹く(標高2,698m).

 <北荒川岳山頂> 
   ↓15分
▼北荒川岳キャンプ場跡(7:40)…ここから広大なお花畑が拡がる(標高約2,600m付近).

 <キャンプ場跡> 
   ↓20分
▼お花畑出口付近(8:00) …通過するのに20分を要する(標高約2,650m).

 <お花畑出口付近> 
   ↓1時間25分
▼北俣岳分岐(9:25〜9:35) …北俣岳・蝙蝠岳方面への分岐点(標高約2,850m).

 <北俣岳分岐> 
   ↓45分
▼塩見岳東峰(10:20〜10:35) …狭い山頂(標高3,052m).

 <混雑する塩見岳東峰山頂> 
   ↓5分
▼塩見岳西峰(10:40〜10:50) …東峰よりやや広い山頂(標高3,047m).

 <塩見岳西峰> 
   ↓30分
▼休憩(11:20〜11:30) …岩に腰掛け休憩(標高約2,900m)
   ↓35分
▼塩見小屋通過(12:05) …小屋は改築中(標高2,760m).

 <改築中の塩見小屋> 
   ↓35分
▼休憩(12:40〜12:50) …急坂を下りきった地点(標高約2,570m)
   ↓1時間
▼休憩(13:50〜13:55) …樹林帯の中(標高約2,600m)
   ↓25分
▼本谷山(14:20〜14:40) …塩見岳,蝙蝠岳方面の展望が開ける(標高2,658m).

 <本谷山山頂> 
   ↓1時間
▼三伏山(15:40〜15:50) …低く雲が垂れ込め,今にも雨が降りそう(標高2,615m).

 <三伏山山頂> 
   ↓20分
▼三伏峠小屋(16:10) …日本一高い(といわれる)峠に建つ山小屋(標高2,585m).

 <三伏峠小屋> 
 

 

 
歩行 11時間
休憩  1時間50分                計 12時間50分
 


第4日(30日/木曜日/天候:晴)

▼三伏峠小屋(5:00) …4時30分朝食.急遽,準備を整え出発.
   ↓25分
▼豊口山分岐(5:25) …鳥倉ルートと塩川ルートの分岐点(標高約2,460m).

 <豊口山分岐> 
   ↓35分
▼標識「6/10」(6:00) …登山口までの距離(又は標高差?)を10等分した標識(標高約2,310m).

 <標識「6/10」> 
   ↓30分
▼標識「4/10」(6:30) …標識は歩行距離の目安として役立つ(標高約2,215m).

 <標識「4/10」> 
   ↓40分
▼標識「2/10」(7:10) …登山口は近い!(標高約2,050m).

 <標識「2/10」> 
   ↓30分
▼鳥倉登山口(7:40) …登山バス発着場(標高約1,780m).

 <鳥倉登山口> 
 

 

 
歩行 2時間40分
休憩 (上記歩行時間のうち計10分程度)      計 2時間40分
 

 
 今回の山行である「南アルプス仙塩尾根縦走」は,出発2日前に「エイ!ヤァー!」の気合いを込め,実行を決断した.長野県南部の週間天気予報をネットで調べると,向こう一週間は天気が良さそうだったから.さて,この様に物事を独断で即決できる点が,単独行の最大の利点と言える.ところで,この長大な尾根を辿る「仙塩尾根縦走」は,今から5年前の2011年に計画を立てていた.しかしながらその年の7〜8月は天候不順が続き,遂に思いは果たせなかった.何故なら下山後の足となる伊那バス鳥倉線の登山バス運行が,8月の最終日曜日を最後に終了したからだ.そこでその年の山行は天気の安定した9月中旬とし,「北アルプス読売新道縦走」に振り替えた.その後毎年「仙塩尾根縦走」の機会を伺っていたが,天候とか仕事の都合もあり,なかなかチャンスは訪れなかった.そんな経緯があったので,地図とか山小屋及び下山後の交通機関等の資料・情報収集は,容易に行うことが出来た.その理由は既に5年前に,南アルプス登山関連サイトをパソコンの「お気に入り」に登録していたからに他ならない.

【 仙塩尾根 】
【南アルプス北沢峠を起点とし,日本百名山の仙丈ヶ岳から塩見岳を経て三伏峠へ至る長大な尾根】
 
 この登山では,前日に北沢峠のこもれび山荘(旧長衞荘,要予約)まで入る必要がある.よって自宅を早朝5時前に出発する.長野県伊那市長谷の仙流荘駐車場に着いたのは,午前11時過ぎ.登山準備を整え,林道バス発着場へ向かう.次発は12:30.自動券売機で切符を購入.次いで券売機の横に有る自販機でビールも購入.チビリチビリ飲みながら,発車時刻まで待つことにする.バスの大きさはマイクロバス程度.席は片側それぞれ2列と1列.12:30発のバスは,補助席も使い切り満席となった.途中,すれ違う下山バスも全て満席であった.北沢峠バス停前のこもれび山荘には13:20到着.この時間であれば仙丈ヶ岳山頂に近い仙丈小屋までは無理としても,馬の背ヒュッテまでは十分に辿り着ける.そうすれば明くる日の行程が楽になる.今思えば至極当然なことであるが,あの時はそこまで気が回らなかった.“後の祭り”とはこのことか.
 

 <南アルプス林道バス乗り場>


 
第1日(27日/月曜日/天候:晴)
 
 今朝は4時前に起き出し,静かに準備を整える.こもれび山荘を出たのは,まだ暗い4時30分.仙丈ヶ岳登山口は,山荘前の林道斜め向こう側,公衆トイレの横にある.甲斐駒ヶ岳登山口は,林道を挟んでその正面にある.ヘッドランプを点灯し,登山道に足を踏み入れる.一合目の標識通過は4:50.周囲はまだ暗いが,見上げると空が白み始めている.二合目地点でキャンプ場からの登山道と合流する(5:05).ここでヘッドランプを外し,ザックに仕舞い込む.三合目,四合目と標識を確認しながら登る.“大滝ノ頭”と呼ばれている五合目には6時10分に到着.ここは小仙丈ヶ岳と馬ノ背コースとの分岐点である.小仙丈ヶ岳を目指し,左の登山路をとる.いきなりの急登となり,息が上がり苦しい.樹林帯から徐々に灌木帯へ,やがてハイマツ帯へと変わり展望が開ける.急坂を登り切った所が六合目(標高約2,650m)で,ちょっとした広場となっている.ここから小仙丈ヶ岳山頂付近が望める.ザックを下ろし,しばしの休憩を取る(6:35).5分程休憩していると,登山者がどんどん登って来た.よって急いで出発.ここから先はは気分のいい尾根歩きとなる.ちなみにこの尾根は小仙丈尾根と云う.気が付けば左手に北岳と富士山が望めるではないか!振り返ると甲斐駒ヶ岳が正面に聳える.何枚か写真を撮りながら登っていたら,あっさり小仙丈ヶ岳山頂(標高2,864m)に到着(7:25).
【登山口より2時間55分】

 <仙丈ヶ岳登山口(前日に撮影)>



 <振り返れば甲斐駒ヶ岳>



 <富士山と北岳>

 
 山頂は既に十数人の登山者で賑わっている.尾根の彼方に目指す仙丈ヶ岳が望める.頃合いを見計らって,山頂標識を背に登山者のひとりに記念写真を撮ってもらう.10分ほど写真撮影に費やした後,いよいよ仙丈ヶ岳を目指し出発.天気は雲ひとつ無い快晴.周囲グルッと360度,見晴らし抜群!これだから山登りはやめられない,と改めて実感しながら登る.約50分で仙丈小屋との分岐に着く.そこから見上げる尾根を登りきると,仙丈藪沢カールが眼下に広がる.カールの底には仙丈小屋が見下ろせ,その上方,仙丈ヶ岳直下には雪渓が残っている.登るにつれ風が強くなってきた.帽子を飛ばされないよう片手で押さえながら歩く.ここまで登るとハイマツも姿を消し,岩だらけの道となる.仙丈岳山頂(標高3,033m)には9:00に到着.山頂の広さは小仙丈ヶ岳と同じくらいで思ったより狭い.
【登山口より4時間30分,小仙丈ヶ岳より1時間35分】

 <小仙丈ヶ岳山頂>



 <小仙丈ヶ岳山頂から仙丈ヶ岳を望む>



 <仙丈藪沢カールの雪渓と仙丈小屋>



 <左から北岳,間ノ岳,遠くに塩見岳>



 <仙丈ヶ岳山頂>

 
 当初,山頂は大勢の登山者で賑わっていた.しばらくして団体らしきグループが一斉に下山を始めると,一気に静寂に包まれた.例によって山頂標識の前で記念写真を撮ってもらう.周囲の圧倒される程の美しい大自然を心ゆくまで満喫するには,もう少し時間が欲しいところであるが,先を急がなければならない.去りがたい気持ちを抑え,山頂を後にする(9:25),次の目的の頂は,目の前に聳える大仙丈ヶ岳だ.十数分もあれば余裕で行き着けると思っていたが,予想外に遠く,山頂(標高2,975m)到着までに35分を要した(10:00).
【登山口より5時間30分,仙丈ヶ岳より35分】

 <大仙丈ヶ岳>

 
 ここまで足を伸ばす登山者は,皆無と言っても過言ではない.ほとんど全ての登山者は,仙丈ヶ岳で引き返すようだ.おかげで山頂を独り占め.気分爽快,ゆったりと弁当を頂こう.しかしながら食べ始めると,ほどなく肌寒くなってきた.結局,慌てて食べ終え,記念写真撮影に取り掛かる.ミニ三脚を立て,セルフタイマーで何枚か撮る.10:20に山頂をあとにする.

 <大仙丈ヶ岳山頂>

 
 登山道は山梨県側の大仙丈沢カール尾根に沿って緩やかに延びる.やがて急坂の下降に転じ,一気に高度を下げる.急斜面から緩斜面に差し掛かる途中で,ひとりの登山者と出会う.北沢峠のキャンプ場まで行くと言う.その割には荷物は,比較的コンパクトだ.しばらく北岳と間ノ岳の稜線を正面に見ながら,快適な尾根歩きを楽しむ.右手には甲斐駒ヶ岳の勇壮な山容が望める.いつしか灌木帯から樹林帯へと変わり,視界は遮られる.何も考えずただ黙々と歩くのみ.苳ノ平付近で二人目の登山者と出会う.仙丈ヶ岳〜両俣小屋間ですれ違った登山者は,この二人のみ.さて,大仙丈ヶ岳から歩行1時間55分の後,やっと休憩を取る.たった5分の休憩の後,再び歩き出す.このころから足の爪先が痛くなってきた.靴が合っていないのか?さらに,疲れて足が十分に上がっていないせいか,転がっている石に度々爪先をぶつけるといった悪循環に陥る.そんなことを繰り返しながら辛抱して歩いていたら,伊那荒倉岳(標高2,519m)に着いた(12:55).山頂と言うより,完全に登山道の一部である.赤く塗られた三角点があり,朽ちた山頂標識が横たわっている.疲れが出てきたので,ここでも5分間の休憩.
【登山口より8時間25分,大仙丈ヶ岳より2時間35分】

 <大仙丈ヶ岳からの大下り>



 <大仙丈沢カール>



 <尾根越に北岳,間ノ岳を望む>



 <伊那荒倉岳山頂>

 
 重い腰を上げ,ザックを担ぎ歩き出す(13:00).すぐに下り坂となり,降り立ったところに高望池がある(13:10),ガイドブックによると池は涸れていることが多いとあるが,梅雨明けして間もないこの時期でもあり,満々とまではいかないが水は湛えていた.視界の利かない深い樹木に覆われた単調な登山道を,ウンザリしながら歩くこと40分,いきなり開けた岩山に飛び出した(13:50).ここが地図上にある独標(標高2,499m)と呼ばれる地点だ.今まで延々歩いてきた仙塩尾根が,一望に見渡せる.仙丈ヶ岳は雲に覆われ,その姿は見えない.空を見上げると,いつの間にか雲が一面に広がっている.独標を越え,再び樹林帯へ突入.横川岳(標高2,478m)には14:35到着.
【登山口より10時間5分,伊那荒倉岳より1時間35分】

 <高望池>



 <独標から望む仙塩尾根>

 
 横川岳も樹木に囲まれ展望は無い.登山道はこの山頂で,いきなり左へ直角に曲がる.ここで時刻を確かめると,既に2時30分を過ぎている.今夜宿泊する両俣小屋の宿泊規定には『15時までに到着のこと』とある.そこで携帯電話が通じるなら,遅れる旨を山小屋に連絡しておこうと思い,携帯電話(docomo)を取り出し電源を入れた.なんと!こんなに山深い場所にも関わらず,電波は完全にO.K. しかも3本立っている.登録しておいた連絡先に電話を入れると,同じ南アルプス市営の北岳山荘に繋がった.両俣小屋には無線で連絡してくれるとのこと.そこで1時間ほど遅れる旨を伝え,携帯の電源を切った.これでひとまず安心,ホッと胸をなで下ろし,出発(14:45).野呂川越(標高2,315m)には15:10到着.現時点で早くも15時を過ぎている.両俣小屋は,この峠を下った野呂川沿いにある.明日は再びこの峠まで登り返さなければならないと考えると,いささか憂鬱になる.とにかく小屋を目指し,急いで下ることにした.ところが結構な急坂ゆえ,爪先に負担が掛かり痛いこと痛いこと.必然的に歩調はスローにならざるを得ない.やっとの思いで野呂川まで下ってきた.川沿いに10分ほど歩けば,目的の両俣小屋だ(標高2,000m).小屋前のベンチに思わず座り込む.この時16:10.しばらく休みを取りながら,汗が引くのを待つ.
【登山口より11時間40分,横川岳より1時間25分】

 <横川岳山頂>



 <野呂川越>



 <野呂川沿いの道.小屋は近い>

 
 この日の宿泊者は5名.夕食は5時30分からなので,少々時間がある.その間に着替え(上着のみ)と洗面(髭剃り含む)を済ませる.これだけで気分は大いにリフレッシュ.上着は小屋備え付けのハンガーに掛けて一晩乾かし,翌日また着る.これを登山中,毎日繰り返す.なお以前は“着たきり雀”だったが,今回よりこの方式に改めた.さて,夕食タイム.一人は自炊なので,夕食を取るのは4名のみ.いつも小屋到着時にビールで喉を潤すのだが,今日は到着が遅れたためその時間が無かった.よって缶ビールを2本注文.例によって食事を終えたのは,一番最後になってしまった.食後,何もすることが無いので,寝床に横たわりウォークマンで演歌を聞く.消灯前であったが,いつの間にか深い眠りに陥っていた.
 

 
第2日(28日/火曜日/天候:雨→曇り→晴)
 
 朝4時前に目覚め,驚いた.雨が降っている模様だ.食堂部分がトタン屋根なので,雨音が聞こえてくる.トイレと洗面所は小屋から離れた屋外にあるので,雨降る中,ヘッドランプを点け小走りで向かう.朝食は4:30と早い.早々に朝食を済ませ,出発の準備に取り掛かるが,気分は重い.しばらくすると,若干小降りになったようだ.レインスーツに身を固め,意を決して小屋を後にする(5:20).
 
 野呂川越を目指して,昨日辿った道を引き返す.樹林帯の中に入ると,雨の影響を余り受けない.また暑くなってきたので,登りに差し掛かる手前でレインスーツを脱ぐ.何だか体が軽快になった様な気がする.しばらく登ると,同宿だった二人連れが休憩している.彼らもレインスーツを既に脱いでいた.挨拶を交わし,先に登る.およそ300mの標高差を,喘ぎ喘ぎ登って行く.野呂川越には6:35に到着.この頃には雨もやんでいだ.
【両俣小屋より1時間15分】
 
 峠にあった手頃な石に腰掛け休憩を取る.邪魔になるのでスパッツを外していると,二人連れが登ってきた.彼らは休む間もなく,先へと進んだ.さらに数分の後,同宿で自炊をしていたソロの登山者が登って来た.彼は各別大きなザックを担いでいる.聞けばザックの容量は140リットル,重さはざっと40kgオーバー.驚いたことに今回の山行では,テン泊で12日間程度を予定していると言う.本日の目的地は熊ノ平なので,私と同じコースを歩くことになる.
 
 そんな会話を交わした後,三峰岳を目指して出発(6:45).昨日辿って来た登山道とは反対の方向へ,足を踏み入れる.5分ほど歩くと,野呂川越と同じ標高の三角点(標高2,315m)がある.緩やかな勾配の歩きやすい登山道が続く.また雨がぱらつき始めたが,構わず歩く.そんな時,二人連れに追いついた.どうやら雨具を着ているようだ.声を掛けて先に進む.樹林帯の中でしかもガスが掛かり,視界は利かない.黙々と歩いていたら,いつしか小雨もやんでいだ.本日,一回目の休憩を取る.標高約2,450m地点.
【両俣小屋より2時間40分,野呂川越より1時間15分】

 <三角点> 



 <緩やかな尾根道が続く> 



 <ここで休憩> 

 
 10分の休憩の後,出発.相変わらず単調な登山道が続く.それにしても南アルプスは,北アルプスと較べて森林限界が高い.2,500m付近でも樹木や植生は豊富だ.三回目の休憩(10:20〜10:25)を取った地点(標高約2,800m)では,低木のハイマツに変わっていた.この頃から雲が徐々に切れ始め,視界が利くようになっってきた.10:45頃には太陽も顔を出し,快適な尾根歩きとなった.三峰岳や間ノ岳が目前に聳えている.こうなると,きつい坂もさほど苦にならない.振り返れば登って来た尾根が一望に見渡せ,かなり高度を稼いだことが分かる.『一体いつの間に,こんなに登って来たんだ?!』と驚嘆.遙か後方には,二人連れが登って来る.あの大容量ザックの登山者も,少し遅れて後に付いている.何度か立ち止まり,勇壮な南アルプスをカメラに収める.とんがった岩山の三峰岳直下に着く頃には,すっかり晴れ渡り気分爽快.岩山をよじ登れば,三峰岳(標高2,999m)山頂だ(11:15).
【両俣小屋より5時間55分,野呂川越より4時間30分】

 <ハイマツの尾根道> 



 <一気に雲が晴れる> 



 <三峰岳を見上げる> 



 <間ノ岳へ続く稜線> 



 <間ノ岳への分岐> 

 
 三峰岳(“みぶだけ”と読む)山頂には三角点,ケルンそして東海特種製紙が建てた四角柱の太い木製の標識がある.この標識は,以降の主要な山頂及び分岐点で見掛けることになる.遮るものがない山頂からの眺望は,素晴らしいの一言に尽きる.北岳から間ノ岳,農鳥岳へと順番に,じっくりと目に焼き付ける.間ノ岳は指呼の間にあり,山頂にいる登山者の姿が見てとれる.遙か南に位置する塩見岳は,残念ながら雲の中.西農鳥岳の手前の尾根には,赤い屋根の農鳥小屋が望める,今日宿泊する熊ノ平小屋も,山腹の森の中に小さく見える.
 
 <山頂標識> 



 <雲に覆われた塩見岳> 



 <農鳥岳> 



 <熊ノ平へ続く尾根> 

 セルフタイマーで記念写真を撮った後,雨具を乾かそうとしていたら,二人組が山頂直下まで登って来た.どっちへ行くのか観察していたら,間ノ岳方面へと向かって行った.さて,本来ならここで弁当を広げる場面であるが,悲しいかな,弁当は無ぁ〜い!両俣小屋で購入したスポーツ飲料を飲む以外,術はない.そんな時,大容量ザックの登山者が喘ぎながら登って来た.しばらく休んだ後,彼は湯を沸かそうとガスバーナーに点火を試みるが,ガスライターは着火しない.無理も無い.ここはアルプス一万尺.酸素は平地の70%弱しかない.何度かトライして,やっと火が点いたようだ.そうこうしているうちに,いつの間にか30分が経過している.少々,くつろぎ過ぎたようだ.急いで出発の準備に取り掛かる.
 
 11:50山頂出発.いきなりやせた岩礫の急坂を下る.昨日,両俣小屋への下りで痛めた爪先が,早くも痛み出した.熊ノ平小屋までの登山道は,ほぼ下り一辺倒である.こんな調子では,先が思いやられる.とは言え,痛みを堪えて歩くしかない.30分余り掛けて急な岩場を下り終えると,ハイマツの生える広く開けた緩やかな尾根に変わる.しかし,僅かな下り坂でも足は痛む.本来なら,このルート上で一番爽快な歩きになると思われるが,今はそれどころではない.ふと頭を上げると,正面に巨大な山塊の塩見岳が雲間から姿を現し,屏風の如く立ちはだかっている.その山頂へと連なる長い尾根が一望に見渡せる.『明日はあの山に登るのだ!いや,登らねばならない!』と気合いを入れ直す.今日の目的地である熊ノ平小屋も,ぐっと近くに見えてきた.見下ろすと平らな尾根に標識が建っている.どうやらあそこが三国平(標高約2,700m)のようだ.農鳥小屋からの巻道と合流する三叉路である.三国平を過ぎると低木の樹林帯へと変わり,井川越へ向かって坂道が続く.勿論,爪先が痛いのでゆっくりと下る.井川越を通り過ぎ,キャンプ場脇を抜けると熊ノ平小屋にやっと到着(14:00).
【両俣小屋より7時間40分,三峰岳より2時間10分】

 <山頂からの下り.塩見岳が見える(正面彼方)> 



 <振り返って三峰岳> 



 <広い尾根> 



 <熊ノ平小屋を見下ろす> 

 
 いつものように汗が引き落ち着いてから,宿泊手続きを済まそうと小屋前のベンチで一服.しばらくすると,あの大容量ザックの登山者が,くたびれたよう様子で到着.傾いたテラス(※)にいた先客の人たちも,その巨大さに唖然としていた.彼はテント泊の手続きを済ますと,すぐにキャンプ場へと去って行った.その後に私も手続きを済まし,2階の部屋へ向かう.本日は空いているので,三畳ほどのスペースに一人である.隣とは壁で隔てられているので,今宵はゆったりと寝られそう.
(※テラスは手前から先端に向かって上り勾配が付いている.小屋番の話に依れば,徐々に傾いてきたらしい.そう言えば,屋外トイレ小屋も少々傾いていた.)

 <熊ノ平小屋とテラス> 

 

 
第3日(29日/水曜日/天候:曇り後晴)
 
 昨夜は5時の夕食後間もなく寝てしまったので,今朝は3時前に目覚めた.早速,ヘッドランプを頭にセットし,出発の準備に取り掛かる.本日の三伏峠小屋までのルートは,今回の山行では最も長く厳しいロングコースとなる.用を足しに屋外に出ると,2〜3人の登山者が出掛けようとしていた.自分が一番の早起きと思っていたが,さらに上がいた.準備を整え3:20に小屋を後にする.こんなに早く出発するのは,我が登山人生で初めてのことである.このような早立ちが可能になったのは,ひとつにLEDランプ登場のお陰とも言える.小型軽量で電池長持ち,光量十分と申し分無し!
 
 そのヘッドランプの明かりを頼りに,ひたすら登山道を突き進む.小屋から20分弱の平坦な場所で,不思議な光景に出逢った.ヘッドランプをかざすと足元の草や木々の葉っぱが白銀に輝いている.目を凝らしよく観察すると,どうやら昨夜降った雨が,葉の上でそのまま凍ったようだ.感心してしばし見とれ,その場に立ち尽くす.早立ちしたからこそ,見ることの出来る自然現象である.『早起きは三文の徳』を実感.さらに10分ほど登ると尾根上に出た.手元の高度計では,約100m高度を稼いだことになる.遠くで先行する登山者のヘッドランプの明かりが見える.再び樹林帯に入り,黙々と歩き続ける.樹間越しに空を見上げれば,白み始めてきた.やや開けた場所(標高約2,610m)に出たので,ここでザックを降ろしヘッドランプを仕舞い込む.ついでに休憩(4:55〜5:00).
【熊ノ平小屋より1時間35分】

 <白銀に輝く草木> 

 
 休憩した場所より10分で樹林帯を抜け,“竜尾見晴”と呼ばれる小岩峰群(標高約2,600m)に辿り着く.あいにく雲が垂れ込め,肝心の見晴らしは効かない.小岩峰を越えるのに15分を要する.この間4〜5人のグループとすれ違う.この付近には山小屋は勿論,キャンプ場も無い.『彼らは一体何処から来たのだろうか?』とふと考える.まもなく新蛇抜(しんじゃぬけ)山(標高2,667m)に差し掛かるが,登山道は東側を巻く.頂上への標識又は踏み跡を見落とさないよう注意して通過するが,そんなものは無かった.誰も登らないようだ.新蛇抜山から歩くこと約15分,低木の繁る草地に至る.さらに進めば,登山道はまるで庭園のような平地を横断し,最後は広い草地の中を通過する.この草はマルバダケブキ(次の項参照)に似ているが,花は咲いていない.そこを通り過ぎればハイマツ帯の急登となる.登り詰めればいきなり北荒川岳(標高2,698m)山頂に飛び出す(7:10).
【熊ノ平小屋より3時間50分】

 <竜尾見晴> 



 <庭園のような平地> 



 <広い草地> 

 
 本来なら塩見岳が正面に眺められるはずであるが,ガスが掛かり周囲は真っ白.視界は20〜30m程度か.風の当たらない場所を選び,取り合えず弁当を食べることにする.しかし5分もすると体が冷え始めてきたので,手っ取り早く弁当を済ます.15分後,山頂出発(7:25).崩落した断崖の稜線に沿って緩斜面を10分も下れば,キャンプ場跡地に着く.ここより登山道は稜線の東斜面へと続き,広大なお花畑の中へ.蕗(苳)に似た葉っぱをもち,黄色い花が咲く植物が群生している.高山植物にしては比較的大きな花だ.帰宅してから調べると“マルバダケブキ(丸葉岳蕗)”というキク科の山野草だった.毒があり鹿が食べないないので,大群落が出来るらしい.そう言えば仙丈ヶ岳以降の縦走路で,このマルバダケブキはよく見掛けた.花の写真を撮りながら歩いたせいもあるが,お花畑を通過するのに20分かかった.以降,登山道は砂礫の尾根道へと変わる.相変わらずガスに覆われ視界は無い.勾配はだんだんときつくなり,息が上がり出す.汗もかき始めた.やがて汗が目に入って,痛いことこの上なし!たまらずザックからヘッドバンドを取り出し,頭に巻く.汗止め用として以前からザックに常備しているものだ.岩が転がり足場の悪い道を急登すれば,北俣岳分岐(標高約2,950m)に到着(9:25).地図で現在位置を確認すると,かなり塩見岳に近づいている.10分の休憩の後,出発.以降,塩見岳の東肩に当たる稜線に沿って登って行く.北側が切れ落ちたヤセ尾根の上,霧に覆われ視界が遮られているので,注意を要する.やがて霧の彼方から話し声が聞こえてきた.突然,目の前に岩塊が出現.よじ登れば塩見岳東峰(標高3,052m)の山頂に至る(10:20).
【熊ノ平小屋より7時間,北荒川岳より2時間55分】

 <北荒川岳山頂付近> 



 <広大なお花畑> 



 <北俣岳分岐> 



 <痩せた稜線> 

 
 人気のある山らしく,山頂は多くの登山者で賑わっている.グループが下山するのを見計って,山頂標識の前で記念写真を撮ってもらう.天気の良い日には富士山が望めるらしいが,今日は生憎の曇り空.塩見岳には少し離れて東峰と西峰のふたつの頂がある.西峰が5m低い標高3,047mであるが,三角点は西峰にある.その西峰も時々雲間から覗ける程度.約10分の滞在の後,西峰へ.先程まで大勢いた登山者も,今はいない.これから熊ノ平方面へ向かうという年配のソロ登山者に,シャッターをお願いする.記念写真も撮ったので,いよいよ下山開始(10:50).

 <塩見岳東峰山頂> 



 <雲が切れて西峰が見える> 



 <塩見岳西峰山頂> 

 稜線を下ると,いきなりの険しい岩場が連続する.落石に注意しながら,緊張感を持って慎重に下ってゆく.今まで忘れかけていた足の爪先が,じんじんと痛み出す.約30分後痛さに耐えかね,天狗岩の付近(標高約2,940m)で10分の休憩を取る.天狗岩を通過すると,直下降を強いられる場面は無くなり尾根も広がり,ジグザクの登山道に変わる.改築中の塩見小屋(標高2,760m)は12:05に通過.塩見新道分岐を過ぎると,樹林帯の下降路を底まで降りる.地図にはこの地点(標高約2,580m)を“ゴーロ”と示している.“ゴーロ”とは山岳用語で『ゴロゴロと大岩や石が散乱する平坦な河原』という意味らしい.確かに近くに大岩があるが,石が散乱する河原という雰囲気ではない.それはさておき,丸太に腰掛けてしばし休憩(12:40〜12:50).次の目的地は本谷山.標高も下がり太陽も顔を出し始めたので,汗をかき出す.途中,休憩を1回入れ,本谷山(標高2,658m)へ辿り着いたのは14:20.
【熊ノ平小屋より11時間,塩見岳より3時間30分】

 <天狗岩の付近> 



 <天狗岩通過後の斜面> 


 <塩見新道分岐> 

 
 陽当たりの良い山頂で僅かな日影を見付け,ザックを降ろして座り込む.ふと顔を上げると,塩見岳が望める.しかし山頂付近は,相変わらず雲に覆われている.右手の蝙蝠岳方面の稜線は,雲も無くはっきりと見える.ひととおり山頂からの眺望を楽しんだ後,重い腰を上げて出発(14:40).三伏峠小屋まであと80分であるが,このペースだと90分は掛かりそうだ.途中,数人に追い抜かれながら歩くこと1時間.やっと三伏山(標高2,615m)に到着.山頂からは三伏峠小屋が見下ろせる.クタクタに疲れていたので,傍らの石に腰掛け小休止.空を見上げると雲が垂れ込め,今にも雨が降りそうな気配となっている.よって急いで出発.荒川岳方面分岐の三叉路を越えると,小屋はもうすぐ.16:10三伏峠小屋(標高2,585m)到着.所要タイムは,予想通りきっかり90分だった.
【熊ノ平小屋より12時間50分,塩見岳より5時間20分】

 <本谷山> 



 <三伏山> 


 <三叉路(荒川岳分岐)> 



 <小屋へ続く最後の登り坂> 

 
 夕食は入れ替え制なので,5時30分からの2回目にしてもらう.その間に洗面,トイレ,着替え,ハイドレーションへのスポーツドリンク補給等を手早く済ます.驚いたことに,屋内トイレは水洗式であった.こもれび山荘も水洗式トイレであったが,山荘前まで車道が通じているので当然であろう.一方,三伏峠小屋は日本一高い辺鄙な峠にある.よくぞ水洗化の工事が出来たものだと感心.ともあれ今晩の夕食時には,酒は解禁となる.屋外トイレの場合,夜中のトイレが煩わしいので,極力,酒類は飲まないようにしている.今宵の夕食が楽しみになってきた.夕食と言えば,三伏峠小屋のカレーは人気がある.カレーは山小屋の定番メニューであるが,ここのカレーはひと味もふた味も違う.数日掛けてじっくり煮込んだ特製のルーが,味の決め手となっているようだ.
 

 
第4日(30日/木曜日/天候:晴)
 
 南アルプスの山小屋の朝食時間は早い.4時30分からの朝食を済まし,歯磨きのため外に出たら,もう下山する人達がいた.『始発のバスに乗るには,小屋を6時ころ出発すれば十分』と小屋番から聞いていたが,急遽,自分も出発することにした.小屋に居ても,どうせ何もすることが無いからだ.そんな訳で,5時ジャストに出発.山腹の北側斜面に設けられた木道を,朝の清々しい気分で歩く.10分ほど歩くと,見晴らしの良いポイントがある.ここから本谷山に続く稜線越に塩見岳が望める.山頂の左の肩から朝日が昇っている.標識「9/10」を過ぎると,間もなく鳥倉ルートと塩川ルートの分岐点(標高約2,460m)に差し掛かる.現在,塩川ルートは登山道の崩壊により閉鎖されている.標識「8/10」「7/10」「6/10」を確認しながら,「5/10」まで降りて来た(6:15).やっと中間点.現在時刻6時15分.この分だと登山口到着は,単純に計算して7時30分となる模様だ.痛む爪先を我慢して,ただひたすら歩く.特に標識「2/10」を過ぎた辺りから急坂となり,大いに足に応える.その労苦もあと僅かの辛抱さえすれば,終わりとなる.カラマツ林の彼方の樹間越しに目をやれば,広場がチラッと見える.それに続く林道も姿を現してきた.7時40分,登山口(標高約1,780m)にゴール.仙塩尾根完全踏破達成!
【三伏峠小屋より2時間40分】

 <塩見岳肩から昇る朝日> 



 <鳥倉ルートと塩川ルートの分岐点> 


 <朝日が射し込む登山道> 



 <登山口まで1km手前付近> 



 <登山口広場が見える> 



 <登山口広場> 

 
 それにしても長いようで短い,苦労の4日間であった.しかしこれで目出度く『一件落着』とはならない.車を駐車している伊那市長谷の仙流荘駐車場まで,戻らなくてはならない.9時10分のバス発車時刻まで,1時間余りある.登山口脇の石の上に,靴を脱いでくつろいで座っていると,年配の登山者が話しかけてきた.神奈川県から列車とバスを乗り継いで塩見岳登山にやって来た,と話し出した.来る時はJR伊那大島駅発12:10発の登山バスを利用したが,定刻を過ぎてもなかなかバスは来なかったと言う.その人の話によると,各停留所の運行時間より早く通り過ぎないよう,始発は遅めに発車することがよくあるらしい.定刻より早くバスが通り過れば,乗り遅れたお客から苦情が出るからだ.よってこのバスも9:10より遅れるだろうと予言した.そんな話をしていると,登りのバスが到着した.乗客を降ろした後,先へ続く林道へとバスは消え去った.果たして定刻9:10になったが,バスは一向に姿を現さない.予言通り5分ほど遅れてバスはやって来た.乗車手続きなどでさらに5分間停車.その人の元職業は,路線バスの運転手だった.なお十数人の登山者が下山したが,そのほとんどはこの先にある一般車両駐車場へ向かって歩いて行った.よって本日のバスの乗客は6人のみ.うち一人は一般車両駐車場で下車した.
 
 <登山口バス停> 



 <登山バス(伊那バス)> 

 登山バスに揺られること2時間,11時過ぎに飯田線伊那大島駅に着いた.岡谷行11:51発の普通電車に元運転手と一緒に乗り込む.彼は岡谷で梓号に乗り換え,東京へ向かうと言っていた.伊那市駅には13:06到着.元運転手に別れを告げ電車を降りる.ホテルの3時からのチェックインに合わせるため,時間調整として待合室で20分ほど休憩を取る.仙流荘へはバスで行くことも出来るが,途中,さくらの名所で有名な遠で,JRバスから市営循環バスに乗り換えなければならない.よってタクシーを奮発することにした.タクシー代は七千四百円也.車で簡単な着替えを済ました後,ナビをセットし宿泊予定のホテルへ向かう.なお宿泊先については,当初,仙流荘に予約を入れたが,30日は満室とのことだった.そこでホテルルートイン伊那インターに変更した.このホテルは伊那インター直近に位置するので便利な上,しかも大浴場がある.チェックイン時刻は,当初の予定通り丁度3時となった.


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(2015年10月記す)
−終わり−