徒然つれづれひとりごと



《#3. 杞憂きゆうなる国「ニッポン」 〜 PART 1 〜 》
(総文字数 約6,000文字)
杞憂(きゆう):いらざる心配。取り越し苦労。よけいな心配。
昔、杞の国に非常に心配性の人がいた。いつも天が崩れ落ちはしないかと心配して、夜も眠られず、飯ものどを通らなかったという。(故事「列子」より)
 
【本編は「団塊の世代」(主として1947〜1949年生まれ)の視点からみた、“一個人”としての意見です。なお、筆者は1949年生まれであり、いかなる政党の回し者でもありません。】
 
 
 まず最初に、終戦後、我が国が歩んできた経済復興の道のりを、簡単に記しておこう。


 
 戦後、日本の経済復興は目覚ましかった。朝鮮戦争(1950〜1953年)の勃発と共に特需景気が後押しし、以降に続く好景気は“神武景気”と呼ばれた。昭和31年(1956年)発表の経済白書では「もはや戦後ではない」と宣言された。当時、この言葉は余りにも有名となった。その後“岩戸景気”と続き、昭和39年(1964年)の東京オリンピックを契機に、日本経済は高度成長期の真っ只中に突入。そして“いざなぎ景気”(昭和元禄とも呼ばれた)を経て、昭和45年(1970年)、大阪で開催された日本万国博覧会は、まさに高度成長期の象徴的イベントであった。反面、急激な産業発展の歪みとして公害問題が急浮上、光化学スモッグが社会問題となり、注目され始めたのもこの頃であった。

 その後、ドルショック(1971年)、オイルショック(1973年)などの紆余曲折はあったものの、日本経済は確実に力を付け、経済大国の仲間入りをする。昭和60年(1985年)、プラザ合意により急速に円高(1ドル100〜120円)が進行、これが景気上昇の要因となる。一方“円高不況”も発生するが、公定歩合引き下げで乗り切った。そしてついに昭和62年(1987年)“バブル経済”絶頂期を迎える。「借金してでも株、土地、ゴルフ会員権を買え!」を合い言葉に、企業はもとより個人に至るまで、投機的な行動に奔走した。結果、異常なまでの株価、地価の高騰を引き起こすことになり、日本中が沸きに沸いた。当時、アメリカは不況に見舞われていたせいもあって、日本の経済力は世界一になったと豪語、「金満日本」についで「ジャパン・マネー」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉が生まれた。また、不当な方法で地価をつり上げる通称「地上げ屋」が暗躍したのもこの頃であった。そして平成元年(1989年)末には、日経平均株価は一時4万円代に届こうとしていた。

 ところが1991年初頭、遂にバブル崩壊。これは日銀の公定歩合の引き上げ(2.5%→6%)、大蔵省の「総量規制(土地関連融資の抑制について)」等により、株価が急激に下落したことに起因するとされる。当然、地価も暴落し、銀行は巨額の不良債権を抱えることになった。一転して景気は低迷、「平成不況」へと突入して行った。元々が実体のないバブル経済であったため、崩壊も一瞬だった。しかし、その引き金となり急加速を煽ったのは、他でもない上記の日銀・政府が採った“失策”であったのも事実だ。

 景気とは常に右肩上がりの上昇を続け、給料とは必ず上がるもの、それにつれて物価も上がる、と信じて疑わなかった。信奉していた「神話」は、この時点であっさり崩れ去った。以来十数年、日本資本主義経済は下降線の一途を辿ることとなった。


 
 戦後のベビーブームで生まれた「戦争を知らない子供たち」、いわゆる「団塊の世代」が就職するのは、おおむね大阪万博開催の時期と重なる。就職先は引く手あまたで、ほとんどが県外の大企業に就職した。当時、どの会社でも社員の平均年齢(30代前半ぐらい)は若く、職場の仲間意識も強く、皆和気藹々と、楽しく仕事に打ち込むことが出来た。あの頃を思い出すと、つい「いやぁ、昔はよかったねぇ〜」とつぶやいてしまい、年寄り扱いされそうになる。でもホントに昔はよかったぞ!
 そんな良好な環境の中、会社に忠誠を尽くし、勤勉によく働いた。終身雇用制だったせいもあり、やがて会社のためなら家庭をも顧みず、寝る間も惜しみ、一心不乱、身を粉にしてでもやり遂げるという、やる気満々の社員が現れた。彼らは後に「企業戦士」又は「モーレツ社員」と呼ばれるようになった。彼らの奮闘努力なくして、日本は経済・技術大国に成り得なかった、と言っても過言ではない。一方、ストレスによる過労死や病気で倒れることもあり、社会問題となった。なお、その戦いに敗れた者又は嫌気が差した者は、会社を去り故郷に帰った。これを「Uターン現象」という。
 
 今の世の会社ほとんどが、リストラとか規模縮小、それに加えて生産施設の海外移転による大幅人員削減、早期退職、新規不採用など打ち出して、暗い話ばかり。しかもリストラの対象として真っ先にターゲットにされるのは、中間管理職、つまり会社のため粉骨砕身頑張ってきた、団塊の世代である。一体、何のため今まで会社に尽くしてきたのだろう?なお、余談であるがリストラを実施し、人員削減を行った会社は、「産業再生法(産業活力再生特別措置法)」なる法律が適用され、減税の対象となる。この法律には、リストラ(事業再構築)の円滑な推進が盛り込まれている。つまり言い換えれば、政府がリストラを奨励し支援していたことになる!?
 加えてこのところ契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどの増加が追い討ちをかけている。会社にとってはすこぶる都合がいいが、これでは人材(技術力、専門能力、熟練工、人脈)が育たない。このような状況が続けば、日本はさらに悪い方向へ向かう。さらに平成19年からは、会社の中核を担ってきた団塊の世代が、揃って一斉に定年退職する。予想より早い時期に、技術力で中国・インドに抜かれるだろう。
 
 不況がもたらす悪影響は各方面にわたる。早い話、能力第一主義となった今、会社での人間関係は、ぎすぎすしたものになる。他人を出し抜き踏み台にしてでも、自分が出世しなければならないからだ。さらに人員削減により、ひとり当たりが担当する仕事が増やされる。当然、多忙になり心のゆとりが無くなる。仕事が出来て当たり前、もし出来なければ上司にこっぴどくどやされる。反面、仕事量が増える一方で、賃金・ボーナスはバッサリカット。そうなると仕事に対する意欲・情熱も失せるというもの。その他、過剰労働・ストレスによる自殺者の増加等が挙げられる。
 もうひとつの悪影響は、凶悪犯罪。近頃とみに頻発に発生する。ほんの少し前まで、日本の治安は世界一と言われていたのに。特に子供らは、たとえ昼間であろうとも、ひとりで通学したり遊んだりすら出来ない。昔のように子供を使いに行かせるなんてことは、とんでもないことだ。こんな物騒な世の中になるとは、誰が予測しただろうか?
 
 不況の実感は、平成9年(1997年)の消費税5%実施以来、特に顕著に現れてきた。去年より今年、今年より来年と言った具合にだんだん悪くなる。ところが今だに政府とか日銀の発表する経済見通しは、決まって「緩やかな景気上昇の兆しがみえる」などと呑気なことを仰っている。確かに一部の大企業とか銀行は、過去最高、空前の利益を上げている。ここにきて「勝ち組」と「負け組」にはっきり二極分化され、経済格差の拡大が顕著に現れてきた。事実、そのような「勝ち組」企業を抱える大都市圏は、好景気に恵まれている。大企業・大銀行優遇政策が、効を奏している表れでもあろう。
 一方、地方はどうかと言うと惨惨たるもので、長引く不況をもろに受けている。どの自治体も税収の落ち込み、加えて国からの補助金のカット等で危機的な財政状況にある。財政再建団体(自治体の倒産)一歩手前といったところも数多いと聞く。まさに地方切り捨て!彼ら政治家は、短絡的にいとも簡単げに“増税、増税”と口々に繰り返すばかり。抜本的な景気対策を練っているのだろうか?政府は“改革”を最優先とし、肝心の景気対策は放りっぱなしにしているとしか思えない。確かに改革も重要課題であろうが、併せて景気対策もしっかりやって貰わないと困る。日本経済が破綻したら改革どころではなくなるぞ。
 
 「なぁにぃ〜!消費税は段階的に引き上げ、最終的に18〜20%にするだとぉ〜!けしから〜ん!」
怒り心頭、思わず叫ばずにはいられない。そんなことを実際やろうものなら、さらに景気はどん底まで落ち込み、回復不能なまでに打ちのめされる。ところが「消費税アップやむなし」と公言する議員さんらが、このところ増えてきた。彼らはまるで実情を理解していないようだ。現在の社会状況から判断すれば、結果は子供でも判る筈である。これじゃまるで民百姓をいじめる、悪代官と変わりがないないではないか!
 それにしても,いかに欧米の消費税率(※注1)が高かろうとも、この制度をそのまま日本に当てはめるのは到底無理があろうというもの。かの諸国は「ゆりかごから墓場まで(※注2)」と言われるぐらい、世界に名だたる社会保障制度の先進国である。しかも国民みんなが納得して、税金を払っていると言うではないか!?これは高い税率に見合うだけの高福祉を、国民誰もが平等に受けられる制度であるからに他ならない。生まれてからの医療費一切、大学までの教育費が無料なのは勿論のこと、高齢者(65才以上)には相当の年金が支給され、老人介護施設(24時間介護体制完備)は無料。失業すれば充分な失業手当が貰える。また墓場までの言葉通り、葬式代に至るまで無料。すなわち、これらの国では何が起ころうと,家族が路頭に迷うことはない。すべて国が面倒を見てくれるからだ。手厚い保障には、元を取ってお釣りが出る程と言われる。このように社会保障の中身が,まるで天と地ほど異なるし、その歴史が違う、歴史が!
【※注1:デンマークやスウェーデンの消費税は25%。ただし高額商品は減免制度が有るようだ。なお、所得税も30〜50%と高額】
【※注2:第二次世界大戦後イギリス労働党が掲げたスローガン。現在では社会保障制度の充実を表す言葉として用いられる】

 一方、日本ではどうであろうか?大多数の国民からの理解は、恐らくこれっぽっちも得られないのは目に見えている。消費税が果たして間違いなく社会保障(医療、教育、福祉面)に投入され、うまく使われるのか、疑問が残るからだ。つまり、政治に対する不信感・不安感が常につきまとう。
 
 「では、一体どうすればいいのか?」答えは簡単。全ての根源は、言うまでもなく“不況”にある。これをすっぱりと断ち切ればよい。そこでまず一番に成すべきことは、すっかり冷え込んでしまった地方の景気を立て直すことだ。この対策にこそ国民の税金を投入しなければならない。ODA(政府開発援助)予算を大幅に削減するとか、あるいは国連への負担金を見直しするとかしてでも、財源を確保してやって貰いたい。対外支出は、その時の国力に応じてやればいいのだ。蛇足ながら先ほどのODAについて付け加えておきたいことがある.現在でも日本は中国に対してODAを拠出している.中国の経済力は今や米国に迫ろうとしている。そんな国にODAが必要なのか?また、軍事独裁国家であるミャンマーに対してもODAを拠出している。いずれもその理由は、日本企業進出を円滑にするためと説明されているが、どうもすっきりしない。
 さて話を戻すとして、景気が上向けば失業者も減り、就職先も増える。特に若者たちに就労の場を与えることが肝心だ。そして国民全体の購買意欲を高揚させなければならない。そうなれば自ずと税収は上がる。製造業のほとんどが海外へ移ってしまった今となっては、極めて困難であろうが、政府は本気で知恵を絞って、早急に対策を練って頂きたい。何もせず、ただ手をこまねいていたのでは、日本の明日は無い。
 
 「では、具体的にどうするんだ?」といきなり詰め寄られても戸惑うばかり。そこで常識的な効果ある景気対策の“方向性”を下記に述べるにとどめよう。
〈例1.企業の生産拠点を海外から国内に移すとか、新たに国内に工場を建設する場合は、何らかの法的優遇措置を設ける。以て一層の雇用促進を図る〉
〈例2.製造業(IT関連は除く)のうち、中小企業及び零細企業が行う研究・開発・設備拡張等に対して、助成金・補助金制度を設ける〉
〈例3.公的事業を積極的に行う。必要とされる事業は見直して、実施する。建設業は日本、特に地方の根幹を成す重要な業種であり就労人口も多いので、ここから活を入れる。ただし、ゼネコン主導型は避ける〉
〈例4.消費税を含む全ての税金は据え置き。無理であろうが、さる政党が提起するように、逆に税率を下げるべきである。将来的にどうしても税率を上げる必要があるのであれば、その時期は景気が上向き安定した時とし、社会保障にのみ使用出来る目的税とすべき。なお、税金は大企業及び高額所得者からどんどん取るべし。〉
〈例5.大企業、大銀行優遇政策は完全廃止。政治献金を貰っている以上、どうしても大企業、大銀行優遇に偏りがちになるようだが、ここはきっぱり訣別して国民本位の政策に改める。なお今後、破綻処理に伴う公的資金投入も廃止。国庫支出の政党交付金(年間約300億円)も減額の方向で見直すべき〉
〈例6.納得のいく社会保障改革の推進。現行制度には多くの矛盾点がある。全国民が平等に年金を受け取れるシステムの構築を急ぐ。老後の心配が無くなれば購買力も一気に加速〉
〈例7.広く国民から景気対策アイデアを公募する〉
 
 日本という国は、現在、様々な難題を抱えている。まず国の借金。内訳は国債濫発による約530兆円にその他の借金をプラスし、大雑把に計算して計約795兆円(2005年)となる。国民ひとり当たり約625万円の借金を抱える。平成17年度(2005年)の国の一般会計予算が約82兆円、うち借金(国債)でまかなう額が34兆円(約42%)であるから、のっぴきならない事態にまで陥っている。借金総額はGDP(国内総生産)の約2倍(200%)となる。欧州連合(ユーロ)加盟の条件がGDP比60%以下であるから、これはもうどうしようもない。地方公共団体の「公的債務」を加えると1,000兆円を楽に超える見込みだ。先進主要国の中でも飛び抜けて最悪の水準である。財政再建への道は、気が遠くなるほど彼方にある。後の世代に巨額借金を残すことは必至だ・・・
 この他に産業の空洞化、少子高齢化、学力低下、拉致問題、天災(大地震含む)、外交(主に中国・韓国)問題、中国・北朝鮮の核の驚異、世界的にはテロの恐怖、環境問題(地球温暖化含む)、中東問題、地域紛争等挙げれば枚挙にいとまがない。
 
 民間活力によりそのうち景気は上向くだろうと、政府は楽観視しているようだが、今行動を起こさなければ手遅れになる。一刻の猶予も無く、先延ばしは出来ない。亡国とならないよう,国の将来をしっかり見据え、もっと緊張感を持ち、不退転の決意で、かかる諸問題と真摯に取り組んで欲しい。日本経済は“砂上の楼閣”のごとく脆いことを認識すべきだ。
 
 要は一部の富裕層に対してでなく、国民全体の立場に立った政策を、きちんと打ち出して欲しいと切に要望する。最後に一連の心配事が“杞憂”であることを祈る。
 
(2006年1月記す)


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