新・徳島の山
VOL.1

【 貧田丸(ひんでんまる) 標高 1,018.5m 】
2008年5月17日(土曜日) 天候:晴
所在地:徳島県海陽町(宍喰・海南)〜高知県安芸郡馬路村
走行距離(自宅→登山口):105km
(総文字数 約2,500文字)
 
 2003年以来休止していた“徳島の山”登山を,なんと5年ぶり!に再開した.再開理由は「はじめに」を参照してもらいたい.その記念すべき最初の山は,貧田丸をチョイスした.山名には変わったものが多いが,この山もそのひとつに挙げられる.なんでも言い伝えによると,昔々,山頂付近に天水田があったそうな.
 
 今回の登山に同行するのはK君.K君とは2001年の綱附森以来となるから,ブランクは相当なもの.小松島のK君宅に寄ってピックアップ,一路牟岐を目指す.牟岐町手前にある川又の橋を渡って直ぐに右折.このルートは海南町経由より,はるかにショートカット出来る.ヤレヤレ峠経由で中部山渓轟公園線へ乗り入れ,さらに真っ直ぐ進む.大木屋集落を過ぎると舗装が切れ,石ころ混じりの極悪路となる.車の腹をこすらないよう超スローダウン.やがて高知県境の大木屋小石川隧道に到着.

 <ヤレヤレ峠隧道>


 <大木屋小石川隧道>

 
 登山口はトンネル手前のカーブ付近にある.標識は無く,古びた赤テープが有るのみ.準備を済ませ登山開始(7:50).取り付き点から急坂の連続.ものの5分も経たない間に,早くも息絶え絶え.登山道脇斜面にひっそりと咲く,シャクナゲが唯一のなぐさめだ.約30分で尾根の頂きに出る.ここでバックパックを下ろして5分ほど小休止.

 <左手斜面に登山口有り>


 <シャクナゲ>

 
 ここより左方面の県境尾根伝いに進路を取る.登山道は尾根の向こう側にあるが,踏み跡は微かにある程度.このルートはあまり利用されていないようだ.赤テープと県境杭が唯一の目印となる.途中,稜線を外れて杉林の急坂を下り,水平の仕事道に突き当たる.この付近が稜線で最も標高が低い鞍部となる.仕事道を左へ進むと再び尾根に合する.歩きやすいのでそのまま仕事道を進んでいたが,尾根からどんどん外れている様子.どうもこれは間違っていると判断を下し,修正のため尾根を目指し直登を試みる.しかし,倒木や間伐した丸太が横たわる急斜面を上るのは,容易ではない.尾根に辿り着いたら汗びっしょり.目の中にまで汗が流れ込み,痛いのなんのって.これだったら引き返した方が,はるかに楽だったろうと反省しても後の祭り.
 
 以降も胸突八丁の苦しい急登が続く.これを登り切ると比較的平らな尾根に出る.さらにチョイ進むと稜線に沿って張られた,獣害除けネットに突き当たる.見渡せばネットは広大な稙栽地をぐるっと取り囲んでいる.山頂はネットに沿って右へ辿ればよい.途中,倒木がネットをなぎ倒していた.『早く倒木を取り除いて直さなければ,鹿に新芽を喰われてしまう!』などと余計な心配をしていると,あっさり山頂(標高1,018.5m)到着.【登山口より1時間45分】

 <ネットに沿って5分>


 <貧田丸山頂>

 
 三角点と標識がなければ,とても山頂とは認識出来ない.しかも先程ネットに突き当たった尾根の方が,標高は高いと思える.周囲は灌木や杉が茂り展望はない.伐採された東方面のみ,僅かに開けているといった具合.
 K君と互いに記念写真を撮り合ってから,レジャーシートを敷いてくつろぐ.過去の登山では“おつまみ”を持参し,ビールで乾杯することを常としていた.そして頂上では1時間程度,のんびりと過ごしていた.が,今はスポーツドリンクを淋しく飲むのみ.『ビールは帰ってから』とただひたすら我慢,我慢.

 <しばしのくつろぎ>

 
 30分の休憩の後,出発.あとは復路を辿ればよい.ネット以降の尾根歩きは,アップダウンが激しく疲れた足に堪える.特に水平の仕事道から登る区間はきつく,まさに心臓破り.見覚えのある赤と白のポールが現れば,下山箇所の尾根は近い.疲れているが最後の力を振り絞り,赤テープを目印にどんどん進む.
 
 『来る時,こんな長い坂を通ったんかなぁ?』とフッと頭をよぎった.下山路は尾根の反対側にある.ここらでよかろうと思い,反対側に出てみた.ところが下山路を示す赤テープが見付からない!それは杉にSの字に似たようなマークが付けられていた.尾根の端から端まで捜したが,やっぱり無い.イヤ〜な空気が漂う.
 
 ここでK君と相談の上,赤テープに従って,もう少し先まで行くことにした.だんだんと標高は上がり,遂に腕時計の高度計(プロトレック)は1,000mを超え,初めて見る広い尾根に突き当たった.明らかに迷ってしまった.これは大ごとだ!下山路の尾根は,確か標高930mぐらいだった.付けられていた赤テープは,多分縦走路を示しているのだろう.
 
 ドッと疲れが出てしまった.この場合,とにかく見覚えのある地点まで引き返すのが定石だ.重い足を引きずりながらも,五感を研ぎ澄ましスイッチ全開.注意深く辺りを観察しながら戻る.やがて先程調査した尾根を通過.さらに先へ戻ってみると,小さめの尾根に飛び出た.早速,端から念入りに調査開始.やっぱり無いのか!と落胆し諦めかけたその時,遂に発見!そのマークすなわち杉は,尾根からはずれた,ほぼ端の方に位置していた.
 
 やれやれと安堵したのは言うまでもない.このような地点は,登山時にマーキングしておくのが肝要,と学習した次第.それにしても40分近くもロスをしてしまった.なにはともあれ登山口目指し,重い足を引きずりながら歩を進める.こんな場合,日本山地図格納タイプの携帯GPSがあれば,迷うこともなく安全なんだが.しかし,それは十数万円もする代物.手も足も出ない.それよりそれだけの予算があれば,軽く日本アルプス方面へ遠征出来る・・・などと考えながら歩いていると,いつの間にか登山口に到着.今回のミッションは,こうして無事完了した.
【下山に要した時間:1時間30分】+【迷った時間:40分】
 
 数年ぶりの登山でもあり余分なアルバイトもしたので,太股とか膝が痛くなるものと覚悟していたが,幸いほとんどその兆候は現れなかった.『よ〜し!次はどの山に登ろうか!』と意欲と自信が湧いてきた.
 
 なお,貧田丸への登山ルートは別にもうひとつある.山頂の南面にまで林道石東線が延びている.登山に要する時間も若干短いので(約80〜90分),こちらのルートが楽かも知れない.
 
(1,000m峰 完全登頂まであと 23 座)

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