新・徳島の山
VOL.6

【 池野河山(いけのこやま) 標高 1,283.2m 】
2009年5月14日(木曜日) 天候:晴
所在地:徳島県那賀町木頭
走行距離(自宅→登山口):108km
(総文字数 約2,800文字)
 
 今年こそ4月早々には山登りを開始しようと決意していた.ところが昨年同様,スタートは5月中旬となり,やっぱり出遅れてしまった.この3月から5月にかけて,珍しく仕事が忙しかったのがその理由.一日ぐらい休んでもどうということはないのだが,重い腰はそう簡単には持ち上げられそうもない.やはり年のせいであろうか?
 
 さて,2009年最初の登山は那賀町木頭に位置する池野河山に決定.自宅から登山口地点まで約2時間30分.早朝でもこんなに時間がかかるから,帰りはさらに時間を要することになる.悪いことにこの周辺には未踏峰がまだ11座も残っている.つまりあと10回,この方面に通わなければならない.それを考えるとウンザリする.『そんなにイヤならとっとと止めたら!』という声が聞こえてきそうだが,そうもいかないのが世の常.
 
 国道195号線から分岐し,高知県へ至る東川千本谷林道を走ることおよそ30分.県境まであと数キロの地点に180度に曲がるヘアピンカーブがある.ここが今回の登山口である.非常に分かり易いので助かる.カーブミラーの際に車を止め,身支度を整え 6:50 登山開始.(標高約850m)
 
 カーブ地点の林道から残土置き場のある広場へ移動.広場上部に砂防ダムがあり,その谷川の左岸に取り付く.間伐した杉林の急斜面を登るのだが,杉の丸太や枝が散乱し,足下の状況は悪い.さらに小石が多く混じった急坂は,滑り易く極めて歩きづらい.『このルートは本当に合っているのだろうか?』半信半疑ながらも尾根へ向かってひたすら登る.悪戦苦闘すること約45分.やっと尾根筋上部に辿り着く.(標高約1,000m)

 <尾根筋上部付近>

 
 以降,踏み跡は薄いものの格段に歩きやすくなる.登山道を示す目印の赤テープを所々に見付け,まずは一安心.果たしてガイドブックの通り,獣除けのネットに突き当たった.(標高約1,130m)倒木が2本,ネットをなぎ倒している.帰りはこの地点で西へ分岐しなければならない.【尾根筋上部より25分】

 <獣除けのネット>


 <ネットに沿って南進>

 
 しばらくネットに沿って南進する.灌木が茂り歩きにくくなったので,途中からネットをくぐり反対側の杉林を歩く.やがてネットも終わり,広場のような尾根を通過すると細い尾根に突き当たる.(標高約1,180m)この尾根を辿ること約20分,8:40 山頂(標高1,283.2m)に到着.【登山口より1時間50分】

 <広場の様な尾根>


 <池野河山山頂>

 
 20分の休憩の後,9:00 山頂出発.順調に飛ばして下る.しばらくして登りの時と尾根の風景が異なり,『妙やな?』と思いつつもかまわずにどんどん前へ進んで行った.歩くこと約50分,広場のような尾根に着いたが登りの時の尾根とは全く風景が違う.しかも時間が掛かりすぎている.ここで初めて道を間違えたことに気付いたが,余りに遅きに失したようだ.

 <だだっ広い殺風景な尾根>

 
 とにかく慌てず落ち着いて,元来た道まで引き返すしかない.地図とコンパスで現在位置を確かめる.北尾根へ進路を取るべきなのに,どうやら西へ派生する尾根に踏み込んでいるようだ.尾根を間違えると,とんでもない方角へ行ってしまう.過去に一度,もう20年も前になるだろうか,鰻轟山(海陽町〜那賀町)で経験したことがある.あの時は西尾根へ進むべきなのに,歩きやすそうな北尾根へ足を踏み入れてしまった.登り返すのがきつく,本来の登山道まで引き返すのに2時間以上も要した.心身共クタクタになったイヤ〜な記憶がよみがえる.
 
 それにしてももう少し慎重になるべきだった.目印の赤テープがあったので信じて疑わなかった.どうやらこの赤テープは,縦走用のものなのかも知れない.『油断してたな!』と言われればその通り,返す言葉もない.重い足を引きずり足早に引き返す.しかし,歩けど歩けど一向に元の登山道に戻れない.何度もブッシュに行き当たり,引き返すこと数回.「おや!さっきここを通ったな???」どうやら同じ場所を行ったり来たりしているようだ.完全に迷ってしまった.周囲を見渡すことが出来れば,ある程度自分の位置を特定出来るだろうが,鬱蒼とした新緑の木々に遮られ全く展望は利かない.相当,焦りが出始めた.時刻は11時50分.すでに3時間近くも山中を彷徨している.足もガクガクに疲れ始めた.
 
 呆然と立ちすくみ,ぼんやり杉林を眺めていると,三本の杉に赤テープが巻かれているのに気付く.『ひょっとしたらこの赤テープは林業関係者が付けたのかの知れない』と思い近寄って観察.すると下に向かっておよそ20m前後の距離をおいて,点々と杉に赤テープが巻き付けられている.『この赤テープを辿ればきっと下りられる!』と直感し,直ちに下山開始!

 <杉に巻き付けられている赤テープ>

 
 それにしてもきつい急斜面だ.こんなところを林業従事者は登っているのだろうか?僅か10分足らずで水平の作業道に到着.(標高約1,150m)ひとまずホッとするが,一帯何処だろう.考える間もなく作業道を下り方向へ進路を取る.するとまもなく木の間越しに林道発見!しかしこの林道は砂利道だ.登山地点の林道は舗装されていた.まさか山の反対側へ下りたのか!と不安がよぎるが,かまわず進む.作業道が登り勾配になったので,林道まで直下降することにする.放置された枝や丸太の間伐材がそこかしこに転がっているので往生する.それでも目前に林道が近づきつつあるので,がむしゃらに乗り越える.

 <作業道に到着>


 <林道を見下ろす>

 
 最近,補助金が出るせいか何処の山林でも間伐が盛んに行われている.しかし,間伐材を切り出し利用するのにコストが掛かるため,そのまま切り捨てられ放置されている.この山に眠る資源を建築材として使用すればいいのに,もったいないことだ.さらに近年,“木くず”燃料としても脚光を浴びている.何故なら木くず燃料は,二酸化炭素排出“ゼロ”として扱われるからだ.現在,工場などで重油など化石燃料からの切り替えが,進めているらしい.

 <林道を歩く>

 
 さて,話を元に戻そう.12:10 やっと林道到着.取りあえず下り方向に歩くことにする.ものの5分と歩かないうちに,下側に舗装された林道が出現.さらに先のカーブをひとつ曲がると,突然目の前にトンネルが飛び込んできた.まさか!?と思いつつトンネルに近づき上部に刻まれた名前を見てまたびっくり.東川千本谷林道が県境を貫く「駒背越隧道」であった.(標高約1,070m)それにしてもとんでもない方角へ来たもんだ.まぁともかく同じ林道でよかった,よかった・・・

 <駒背越隧道>



 <右が下ってきた林道.左が東川千本谷林道>

 
 PM12:20隧道前を出発して,元の登山口まで戻るのに早足で40分かかった.13:00 駐車場所へ無事帰還.ハァ〜,一生記憶に残る,散々な“登山記念日”となってしまった.【山頂より4時間】
(1,000m峰 完全登頂まであと 18 座)

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