新・徳島の山
VOL.8

【 赤城尾山(あかぎゅうやま) 標高 1,436.0m 】
2011年5月16日(月曜日) 天候:晴
所在地:徳島県那賀町木頭〜高知県香美市物部
走行距離(自宅→登山口):112km
(総文字数 約3,450文字)

 
 前回の石原丸から早2年が経過.思えば随分と長く徳島の山をお休みにしていたものだ.「何でや?」と問われると「仕事が忙しかったんです」と言う事になる.実際ウソではないが,本当の大きな理由は他にある.池野河山で道に迷ったことは既にVOL.6内で書いた.この後の石原丸(VOL.7)で発生した,ある“事件”が大きく関与する.大きな声で言えないが,あれからもう2年経つので勝手ながら“時効"と判断し,ここだけの話としてこっそり話そう.
 
 今まで沈黙を守ってきたが,実を言うと石原丸は友人と二人で登った.登山中は一緒に登ったが,下山は別々になった.何を急いだのか,その友人が山頂より一気に走り去るように飛ばし,そして眼中よりあっさり消え去ってしまった.てっきり先に下山したものと思い,オレも遅れまいと足早に歩を進め,汗をかきかき登山口を目指した.しかし,そこに友人の姿はなかった.この時10:10.『アレ〜,妙やな!一体どこで追い抜んたんだろか???まっ,そのうち下りてくるだろう』そう気軽に考え,車の窓を全開にしシートを倒して寝て待つことにした.
 
 ところが1時間が過ぎ2時間が過ぎても一向に戻ってこない.無論,携帯電話は圏外なので連絡はつかない.『ハハーン,どうやら奴は完全に迷ったようだな!』と確信した時から,オレはよからぬ事をいろいろと思い巡らし始めた.『あれだけのスピードで山道を突っ走れば,いともたやすく進路を誤り尾根を踏み外すことは容易に想像出来る.またこの山は下るにつれ,だんだんと傾斜がきつくなり,意外と崖も多い.油断すれば転落しかねない.さておき,遭難したとなれば捜索隊を呼ばなければならない.友人の嫁はんにはどう説明しよう?まさか「勝手に先に行っちゃって勝手に行方不明になっちゃいました」なんて言っても信じてもらえないだろな,多分.オレの監督責任てことになるのかな,ウウ〜ンどうしよう,ヤだなぁ・・・』などなど.そんな事を考えると胸がせこくなり,気はますます焦りだす一方.当初,3時頃まで待つことにしていたが,矢も盾もたまらず,また救助の段取りなど考慮すると暗くなるので,2時前に救助の110番通報を一大決心.
 
 とにかく携帯の通じる地点まで,急ぎ下りていかなければならない.重苦しいイヤ〜な気分を抑え込み車のキーを思い切ってひねる.はっきり覚えていないが20〜30分ぐらい走っただろうか.やや見晴らしのきく開けた場所に辿り着き,慌てて携帯を開けるとアンテナが1〜2本立っている.一瞬のためらいもあったが,ここはもう何も考えず一気に110番.簡単な事情と場所を聞かれ「何故,別々に行動したのか?」と質問されしばし窮するが,ここは事実を話すしかない.
 
 その後,登山口まで再び戻ることを署員に伝えてから電話を切る.すると驚いたことにディスプレイには緯度と経度が表示されていた.『ホー,なるほど,これで先方に発信地点が特定できるのか,大したもんだ!』などと感心しているヒマもなく,登山口へと取って返す.登山口から200〜300m手前だったか,何と!友人がこっちに向かって歩いて来るではないか!ズボンが泥でかなり汚れているが,ケガはなさそう.ヤレヤレ,まずは一安心.だが安堵に浸っている場合ではない.今度は救助の中止を一刻も早く警察に連絡するのが,今課せられた最優先ミッションだ.
 
 再び先ほどの携帯の通じる地点まで,土煙を上げ一目散に車を飛ばす.道中,遭難した様子を友人に問う.やはり思った通り尾根を間違え,あらぬ方向に踏み込んだらしい.それも何回も!元の登山道に戻るのに3〜4倍以上の時間がかかったと言う.『ハテ?これは奇妙きてれつ.なんでや?どうにも理解出来ん!それほどまでに迷うような,険しく難しい山とは決してちゃう(違う)のに!』とオレは頭の中でしきりと不思議がった.
 
 警察に友人の無事を連絡,すると担当者から署に出頭するよう要請された.N署までは約1時間半掛かり,夕方5時頃警察署到着.役場の職員を始め地元の消防団が待機中で,しかも県警のヘリコプターまで出動準備をしていた,と署員から説明を受けた.ただ小さくなってひたすら謝り続けたのは言うまでもない.そして「なんで別々に行動したのか?」と再々訊かれた.あぁ,この日はオレにとって生涯忘れられない日となり,また生まれてから今日までで最も長〜い1日(THE LONGEST DAY)となった.まぁ何はともあれ大ごとに至らずによかった,とプラス思考で考えて自分を慰めるしかない.
 
 “山は二人以上のグループで行動すべき”と言われているが,当てはまらないケースもあることが分かった.オレはあの日以来『“徳島の山”は必ずひとりで登るぞ!』と心に誓った.そして二度と同じ轍を踏まないよう,且つ安全対策に万全を期すため,大枚をはたいてアメリカ製山岳用GPS 「GARMIN OREGON 300」とGPSに格納する「日本登山地図(10m等高線入り)」及び「日本詳細道路地図」を,事件後しばらくして購入.併せて簡易型の「BUSHNELL BACKTRACK」(後に後継機種のBACKTRACK 5に買い替え)と「GARMIN foretrex 301」も順次購入.TPOに応じて使い分けられるよう,また必要に応じ複数台使えるよう取り揃えた.

 <GARMIN OREGON 300(タッチパネル式)>


 <BUSHNELL BACKTRACK(旧機種)>


 <BUSHNELL BACKTRACK 5(後継機種)>


 <GARMIN foretrex 301(腕時計型)>






 話がかなりそれてしまったが本筋に戻そう.つまり早い話が,はからずも連続して迷ったことになったので,いまいち山登りに対して気乗りがしなかったせいもある.さて,国道195号線高ノ瀬峡手前から分岐する東川千本谷林道を走ること約30分.高知県へ抜ける駒背越隧道の手前右側(徳島県側,標高約1,040m)が今回の登山口だ.7:25 登山開始.なお,赤城尾山の呼び名は“あかぎおやま”または“あかぎゅうやま”と二通りある.

 <右:東川千本谷林道入口>


 <駒背越隧道(登山口は手前右手)>

 
 県境尾根まで約15分(標高約1,150m).以降,この尾根を右(北方向)に辿る.木の葉越しに最初の崩壊箇所(崩壊箇所はあと2ヶ所ある)を右手に見ながら,杉林のきつい登りを終えると広い尾根に出る(標高約1,300m).古いコンクリート杭の周りにプラ杭が3本.「さぬき山好会」の小さなプレートが立てかけられている.【登山口より40分】

 <駒背山分岐(右のヤセ尾根が正しい道)>

 
 ここより広い尾根に沿ってゆったり歩くこと15分,とある山頂に着いた.標識には駒背山(標高1,311m)とある.『アリャ!?何のこっちゃ!』早速,道を間違えたようだ.ガイドブックにはくれぐれもこの尾根に踏み込まないよう,そして右よりのルートを取るようにと書いてあったのに!せっかく最新兵器のGPSを持っているのに何たる不覚!早速GPSを取り出し現在地を確認すると,やはり左の尾根に入り込んでいるようだ.先程の杭のある分岐点(駒背山分岐)まで戻る.25分のロスタイムであるが,ブナなどが生える自然林の中での散策なので気分のいい寄り道であった.決して負け惜しみではないが,これはまさに“ケガの功名”.そこで駒背山もついでに登ることを,是非お勧めしたい.

 <気分のいい自然林の尾根(駒背山へ至る)>


 <駒背山山頂>

 
 赤城尾山へはこの分岐を狭い尾根に向かってそのまま直進する.すぐに鞍部に向かって下りとなる.10分ほどで崩壊地(標高約1,300m)に到着.東面が開けているので,東川千本谷林道を眼下に池野河山や甚吉森(と思う)の山々が眺められる.ここよりアップダウンを繰り返し,約25分で次の崩壊地(標高約1,300m)に到着.ここの崩壊は大規模で崖っぷちに近づくだけで恐怖を覚え,足がすくむ.覗き込むにはちと勇気がいる程の断崖となって,遙か下までえぐれている.【登山口より1時間40分】

 <崩壊地その1>


 <崩壊地その2(こっちが大規模)>

 
 所々に咲いているアケボノツツジを観賞しながら,明るい自然林を登って行く.最後の急坂を登り切れば赤城尾山手前のピーク(標高約1,400m)に至る.大崩壊地から約35分の歩行.以降,勾配の緩い広い尾根を散歩気分で歩く.しかし以前はスズタケがびっしり生えていたという.

 <アケボノツツジ>


 <赤城尾山手前のピーク>


 <山頂間近の広い尾根>

 
 西へ辿ること15分で1,436mの山頂到着.山頂は平らで開けているが,周囲に雑木が生え展望は無い.三等三角点の際にシカと思われる頭蓋骨が置かれていた.【登山口より2時間30分】

 <赤城尾山山頂(さらに進めば行者山へ至る)>


 <シカの頭蓋骨?>

 
 25分の休憩の後,山頂を後にする.以下主要時間を次に記す.なお,駒背山分岐から少し下った杉林の中で,作業道に惑わされ進路を左に取り過ぎた.結果,崩壊箇所を右側に見る(登るときは崩壊箇所を右側に見た)ことになったため登り直し,進路修正.
 
山頂
↓35分
大規模崩壊地
↓25分
次の崩壊地
↓10分
駒背山分岐
↓25分(進路修正)
尾根取付
↓10分
登山口【山頂より1時間45分】
 
(1,000m峰 完全登頂まであと 16 座)

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