新・徳島の山
VOL.9
【 中東山(なかひがしやま) 標高 1,684.6m 】
2013年5月23日(木曜日) 天候:晴
所在地:徳島県那賀町木頭〜高知県香美市別府
走行距離(自宅→登山口):117km
(総文字数 約2,900文字)
今回の「徳島の山」登山は,およそ2年ぶりとなる.昨年は1回も登っていない.こんなペースだと「阿波の1,000m峰」完登はいつのことになるやら.そんなことを考えながら約2時間30分の間辛抱強く運転を続け,7:00 AMに大栃林道(63支線,車両通行止)入口にある登山口(標高約1,060m)に到着.なお,今回目的としていた山は西又山(標高1,360m)であった.ところが登山口へ至る東川千本谷林道が,無期限の通行止めとなっていた.そこでやむなく第2候補として挙げていた,中東山となった訳である.山間の道路状況は,いつどう変わるか分からない.常に代替え候補として第2・第3の山を,周到に準備しておかなければならない.
<通行止めの東川千本谷林道>
<林道入り口のゲート.向こうに「熊注意!」の白い立て札>
登山準備を整え,7:20 AM に登山口を出発.林道入り口に設けられているゲートを潜り抜ける.傍らに「熊に注意!」の標識が立っている.早速熊鈴を取り出し,デイパックに取り付ける.ところで本当の登山口は,2.6km先の林道終点にある.『車で行けたらよっぽど楽なのになぁ』と呟きながら,ひたすら退屈な林道歩きをこなす.約15分で最初の小規模な林道崩壊箇所に着く.2ヶ所めの崩壊箇所を過ぎて5分ほどで『アッ!』と驚くほど大規模な崩壊地に出くわす(7:45 AM).このような状態から復旧するには,莫大な費用がかかるだろう.到底,予算的に無理と思われる.鋭く切れ落ちた崖っぷちの際を,足下に注意を払いながら恐る恐る通り過ぎる.【登山口より30分】
<大規模崩壊箇所>
<別の崩壊箇所>
この後も何箇所かの崩壊地を乗り越えて行かねばならない.4〜5ヶ所ぐらいあっただろうか?ジル沢谷に沿って付けられたこの林道は,落石が至る所に転がっている.全線ズタズタに寸断されていると言っても過言ではない.一方,車が長いこと通行していないので,部分的であるが苔むした風情のある区間も残っている.時折,心地の良い涼しい風が頬に当たり,いい気分にしてくれる.林道終点の広場(標高約1,260m)には,8:15 AMに到着.【登山口より55分】
<風情のある林道>
<林道終点にある登山口>
ここからいよいよ本格的な登山となる.しばらく沢に沿って登って行く.およそ10分ほど登った所で対岸に渡ると,案内標識がある.案内に従い右方向に折れ,小さな沢を渡り,大木の繁る見通しの良い自然林に入る.ジグザグの登山道を登りきると,尾根らしき場所(標高約1,360m)に出る.【登山口より1時間20分,林道終点より25分】
<案内標識>
登って行くにつれ尾根から広い斜面へと変化し,勾配はだんだんときつくなる.この斜面がくせもので意外と登りにくい.地面は硬い土ではなく,覆っているのは柔らかい畑のような土.一歩踏み出す度に滑ってずり落ちる.息も荒くなりちょっと登っては休み,又ちょっと登っては休む.そんなことを繰り返していると,保護用のフェンスに突き当たった(9:15 AM).熊や鹿から自然林を守るためだろうか?しばらくフェンス沿いに登る.フェンスは尾根近くまで続いていた.
【登山口より2時間10分,林道終点より1時間15分】
<保護用フェンス>
この尾根(標高約1,670m)は南は石立山,北は剣山〜三嶺縦走路へ接続する縦走路となっている.以前はものすごいスズタケのブッシュに阻まれた難路であったという.今はササも枯れ下草も無く,ブッシュはきれいさっぱり消失していた.近年,このような山容の山が目立つ.やはり増えすぎた鹿による食害のせいであろうか?それとも昨今の異常気象が関係しているのか?しかし一方,この現象は登山者にとっては有り難い.まるで登山道の“ハイウェイ”のように,スイスイッと飛ばして歩ける.反面,何処でも自由に歩いて行けるので,広い尾根とか斜面では進路を見失う恐れがあることも確か.下山時には特に特に御用心!
<歩きやすい尾根道>
<尾根より剣山方面を展望>
南(石立山方面)へ進路を取り,道はやや下り気味になる.15分ほど歩くと崩壊地にさしかかる.徳島県側の高の瀬峡に向かって大規模に崩れ落ちている.これより登山道は急な下りとなる.その鞍部(標高約1,630m)に「剣山・三嶺縦走路←→中東山・石立山」と書かれた道標がある(9:45 AM).この地点は三叉路となっており,もうひとつは「ジル沢」と示されている.ここからジル沢に下りれば,帰りに登り返す必要がなくなるので大いに楽である.が,果たして道はあるのかどうか不安なところ.
<崩壊地>
<鞍部に立つ道標>
鞍部を過ぎると登山者の話し声が聞こえてきた.男1人,女2人の中高年グループだ.こんな辺鄙な山で人に遭うのは珍しい.サガリハゲ山(2008年10月)以来,最近の登山(徳島の山)では誰にも遭っていない.挨拶を交わし,追い抜いて先へ進む.小さなピークをふたつ越えて,中東山山頂(標高1,684.6m)到着(10:05 AM).
【登山口より2時間45分,林道終点より1時間50分】
<大東山山頂と三等三角点>
山頂は広く開けている.南方眼前にはどっしりとした山容を誇る石立山(標高1,707.7m)が聳えている.石立山に登ったのは1998年4月であるから,もう随分昔になる.あの時は徳島県側の日和田から,仲間二人と登った.このコースは急登に継ぐ急登で,3時間半も掛かかってやっと山頂に着いた.当時若かったせいもあり,1時間も休憩するとすっかり疲れが取れた.当初の計画では山頂から元来た道を引き返す積もりであったが,元気を回復したので,高知県側の別府峡へ下りようと話がまとまった.これが大きな間違いで,下るにつれゴロゴロした岩のひどいヤセ尾根で,危険な断崖の道が続いた.しかも水は山頂で飲み干して,一滴も持っていない.結局,別府峡到着まで3時間近くも要し,へばりながら這う這うの体で辿り着いた様子が記憶によみがえる.しかし,今となっては懐かしい想い出でもある.そんなことを思い出しながら東の方へ目をやると,彼方には霞んでいるが,次郎笈と剣山が重なり合って双耳峰のように見える.西には白髪山(標高1,769.7m),その左手向こうには綱附森(標高1,643m)が望める.北方向は残念ながら樹林に遮られ展望は無いが,しろやしおが満開で楽しませてくれる.そうこうして風景を楽しんでいるうちに,先ほど会った3人のグループが登って来た.高知から来たようで,中東山登頂は今回で7〜8回目だそうだ.取り合えず,記念写真を撮ってもらう.
(※石立山は 「徳島の山 → Vol.5 石立山」 で検索して下さい)
<石立山>
<彼方の次郎笈と剣山>
<白髪山(右)と綱附森(中央)>
<しろやしお>
20分の休憩の後,山頂を後に下山開始(10:25 AM).道標のある鞍部まで10分少々.この手前で進路を左に取り過ぎ,いつの間にか登山道を外れていた.幸い,気付くのが早かったので大事に至らなかった.下山時は常に気を引き締めなければならない.さて,道標には左方向「ジル沢」とあるが,完全無視して元来た道を真っ直ぐ辿る.分岐の尾根までさらに約15分.【山頂より25分】
ここより再びフェンスに沿って,滑りやすい急斜面を下る.フェンス以降,斜面は見通しは良いが広大となり,しかも登山道の踏み跡は見当たらなくなる.さらに目印の赤テープもまばらで,間違った尾根に踏み込む恐れが出てきた.そこでGPSを取り出し,再三,軌跡をチェックし,何度か進路を修正する.いつの間にか,見覚えのある尾根上を歩いていた.ここまで来れば,もうこっちのもの.登山道の踏み跡も明確となり,後はそのまま辿れば万事OK.林道終点の登山口には11:40 AMに無事到着.しかし再びイヤな林道歩きが持ちかねる.気温も上昇し,汗がじわじわ出てくる.早足で黙々と歩き,林道入り口には12:25 PM到着.
【林道終点より45分,山頂より2時間】
<見通しの良い広い斜面>
(1,000m峰 完全登頂まであと 15 座)
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